パリパリにぼし朝、実家のドアを開けると、何かしらの旨みの詰まった、香ばしい匂いに襲われた。煮干を炒ったそうである。「食べてみなさい」大きなビンのふたを開けて勧められるがまま、ひとつをパリっと噛んでみた。 海産物問屋さんから、新鮮な煮干をいただいた。 10センチくらいの立派なもので、青と銀のコントラストの美しい肌がきらきら光り、身体がクイッと「へ」の字にまがっている。 この「へ」の字曲がりが新鮮さの証。古くなると脂が酸化し、お腹にしまりがなくなって「逆への字」に曲がってしまうのだ。 昔から良く煮干を食べていた。 母がお出しを取って引き揚げた煮干をそのまま食べたり、コンブやお芋の炊き合わせの時には引き揚げずにそのまま煮てもらったり。煮干の煮物、臭みは全然なく、固い繊維質の身が甘辛くほろほろと崩れてかなりおいしい。 ビタミンDやDHAやEPAが豊富。こんなおいしいものを捨てる手はない。 問屋の奥さんは、乾煎りしてそのまま食べるよう、と勧めてくれた。 想像すらしていない食感だった。 今まで食べてきた方法は、干された固い筋肉繊維の面影がどこかに残り、その「引き」を楽しむのが常であった。 この炒り煮干には、「繊維の引き」が存在しないのだ。 サクサク、パリパリと薄焼き煎餅やラスクのような軽い食感。 優しい優しい、クリスピーさ。噛んだ瞬間に「香ばしい旨み」がふわっと広がり、鼻腔から脳に直行する。 やめられない、とまらない。 やめられない、とまらない。 周りのみんなに食べて欲しい。 新鮮だから美味しかったのかも知れない。 これからにぼしを見かけたら注意深く観察しよう。 街中で、「への字」を探せ。 ちなみに最近、甘いものが欲しいときは、ふかし芋。 クリスピーなおやつはスナックではなく、炒りにぼし。 究極のヘルシーコンビネーションであることは間違いなかろう。 芋をおいしいと感じる自分。 土地の食べ物は、こうも人間を変えてしまうのか。 人間の身体もまだまだ素直なもんだ。 |